私が書道家を目指すようになった理由/野間志保の人生ストーリー

フリーランス

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Q:書道家になるにはどうしたら良いの?
会社員を辞めて書道家になった人や、主婦で書道家になった人のストーリーが読みたいです。
 
 
 
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とにかく忙しさに追われ、「今日を乗り切る」と必死な会社員や主婦。
子育てをしている親はもちろん、おじいちゃん、おばあちゃんやママ友もみんな疲れている。
 
 
「男は仕事、女は家庭」
「子どもは女が一人で育てるもの」
「そんなのどうせ無理だよ」
 
20年勤めた会社を辞めた彼女の目に映っていたのは、そんな言葉を受けて諦めている人々の姿でした。
 
 

書道家、野間志保さん、41歳。
 
 
世のママ自身が元気じゃないと子どもに向き合えない。
 
書道を通じて、自分の内面と向き合う機会を持ってもらいたい。
自信を持ってもらいたい。
枠にとらわれず、自分の可能性を信じて心豊かに生きてもらいたい。
 
そう思って活動している野間さん。
会社員を辞め、主婦となってから書道家を目指した人生ストーリーに迫ってみました。
 
 
 

なぜ、書道家を目指そうと思ったのか


 
Q:どういう経緯で書道家を目指そうと思ったんですか?
 
▼野間
私は元々、18歳からケーキ屋でアルバイトを始めて、菓子・製造販売会社で38歳までの20年間ずっと働いていました。
 
ケーキ屋とかが新規オープンするじゃないですか?
そこのオープニングスタッフの指導とか、フランチャイズのオーナーや社員の指導・育成とかを担当していて、すごく楽しかったんですよ。あちこちに出張も行けたし。
 
3児の母なんですけど、旦那さんのお義父さんたちに育児に協力してもらって仕事を続けてきたんです。
 
 
 

 

(旧姓:東)
 
 
 
Q:何で会社を辞めたんですか?
 
▼野間
38歳の時、ある日、お客さんからクレームが入ったんですよ。
 
勤務時間が終わってからだったんですけど、お客さんのところに伺って終わったら夜9時になっていて、家に帰ったら子どもが熱を出してたんです。そこで、旦那さん側のお義父さんから「子どものことをもっと考えないと!」って怒られたんですね。
 
会社の飲み会にいってる旦那が怒られなくて、残業してた私が怒られたので、そこでプツッときて「私がもう家族の犠牲になります」と言って、仕事を辞めることにしました。
 
 
私は、「子どもはみんなで育てるもの」って思ってたんですけど、子どもが小さいのに奥さんが出張したり帰りが遅いっていうのは受け入れられなかったし、家族も子どももお義父さんたちも周りのママ友も、みんな疲れてましたね。
 
 
 

 
Q:20年間勤めた会社をパッと辞めることができたんですか?
 
▼野間
いえ、まずは契約社員やパートに切り替えてもらったんですね。
でも、パートになっても正社員の時にやっていた仕事内容をやってしまって、収入も時間も減っていって…。
 
そうして徐々に辞めました。
心境的には、「辞めた」っていうより、「好きな仕事を家族に辞めさせられた」って人のせいにしてました。
 
 
 

「時間」ができたことで、これまでの人生を振り返る時間ができた


Q:20年ぶりに仕事を辞めて、心境の変化ってありましたか?
 
▼野間
まず、時間が増えますよね。
それで、気持ちに余裕ができました。
 
わかりやすいのは、それまでは子どもに「時間ないから早くして!」って言ったり、「〇〇できないとダメ!」って言ってたのが、全然イライラしなくなったんです。この頃、スマホの「ツムツム」っていうゲームばっかりしてました(笑)
 
 
それまではママ友あるあるの
 
「お金がない」
「子どもが〜」
「主人が〜」
 
っていう話をしてたのも、全然おもしろくなくなったんです。
それ言ってても何も解決しないし、真面目すぎる!
 
振り返れば、会社に勤めて結婚して、子育てしながら働いてっていう世間体の価値観に何の疑問も感じてなかったし、書道とか自己表現をするタイプでもなくて、自己啓発系のセミナーにも参加したことがなかったんです。
 
会社員時代は、休みはもうお酒飲んで寝るばかりで何もしてなかったんです。
 
これからは、お茶代で1000円使うなら、習い事とか自分の気持ちが高まるものに使おうって思うようになって。
 
家族にも、「これまで私に遠慮してくれてたんだなぁ…黙ってやってくれてたんだ」ってだんだん思うようになりました。
 
仕事を辞めて時間ができたことで、そういう変化が起こったんです。
 
 
 
 
Q:たくさん選択肢があったと思うんですけど、何で書道を選んだんですか?
 
▼野間
ケーキ屋をするのもいいかなって最初は思ったんですけど、大変なんですよ。
お盆もクリスマスも年末年始も正月も土日・祝日も仕事だから、サラリーマンの旦那さんとすれ違うし、子どもの行事にも出られないから。
 
家族がもめたことも関係してるから、家事に関係ない、非日常なものがいいなって思いながら「自分がこれまで長く続いたものって何だろう?」って振り返ったんです。
 
そしたら小学校6年間書道を習ってたことを思い出して。そのころは親に行かされてたんですけど、「かっこいい字を書く大人すごいな」って思ったし、続けてたら字はうまくなるんです。
 
小学校当時も、クラスメイトから「字うまいね!」って言われて自己肯定感も上がってたなぁと。あと、「老後どうすんねん問題」を考えて、これから40年くらい生きるとして、書道なら年を取っても続けられるなってリアルに思いました。
 
あと、ケーキ屋のコンサルをしている人の話で「私、カフェをやりたいんだよね。そういう場所を経営してたら誰かが訪ねてくれるでしょ?」っていう話が印象的で。
 
書道教室なら年老いても誰か「すみませーん」って訪ねてくれそうだなって思って。そういうことを色々考えて、書道家になろうと思いました。
 
 
 
Q:家族や周囲から反対はされなかったですか?
 
▼野間
実は、書道を習う前に、ユニクロで働いてました。
でも、興味がなくて続かなかったですね。
 
「営業前の掃除だけでも良いから」って言ってもらってたんですけど、これはもう大口叩かないとダメだって思って、「書道家になるんで辞めます!」って言ったんです。
 
そしたら笑われましたね。
でも、自分の中では「できる」って思ってたんで、「サインもらうなら今ですよ?(笑)」って言ったり。
 
ママ友にも笑われました。「気は確かか?」って。
 
 
 

通う書道教室の条件は、「京都市内」「男」「若い先生」の3つ


 
Q:今通っている書道教室を選んだ理由は?
 
▼野間
今は、武田双鳳先生に弟子入りして教室に通っているんですけど、書道を始めようと思った4年前は、「京都市内」にある教室で、「男」で「若い先生」っていう3つの条件で探してたら検索で偶然ヒットして。この時はまだ先生のすごさもわからない状態でした。
 
 
 
Q:何でその条件だったんですか?
 
▼野間
京都だと近いから、まずそれが大事で。
若い先生が良い理由は、小学生の時の書道教室がシニアの先生だったんですね。
 
だから、急に体調不良で「今日はここまで」って終わられた経験があって。
 
あと「男性」ってこだわるのは、私は女性が苦手なんです。
イジメたりイジメられたりっていう経験はないんですけど、母親がヒステリックになったり「キー!」って言って家から出て行ったりですごく気を使ってたんです。
 
兄は成績の良い私立の学校に進学したりファミコンを買ってもらえたりで母から世話をしてもらってたのに、私はあんまりかまってもらえなかったし、「怒らせないようにしなきゃ」って子どもながらに思っていて。
 
それの反発もあって、学生時代に「早く家を出たい」って思ってたし、「大学→OL→結婚」っていうのにも逆らってやろうと「ケーキ屋でバイト→短大→ケーキ職人に弟子入り→学生時代にバイトさせてもらっていた製菓販売会社勤務」っていう道をとったんですよ。
 
ケーキ職人に弟子入りしていた時代は、風呂なしボロアパート初任給11万で1年がんばったけど挫折しました(笑)
 
あと、女性だけの職場か、男性が少しでもいる職場かで雰囲気がすごく変わるんですよ。そういった経験から教室を選びました。
 
 
 

書を通じて人生観が変わった


 
Q:書道を始めて心境の変化はありましたか?
 
▼野間
武田双鳳先生の教室の生徒の中には、遠方から新幹線でやってくる大学生もいて。
「大学に行くより楽しい」って言ってるんですね。
 
月3回教室があるんですけど、2週目は「創作」なんですよ。
 
ハガキに漢字一文字を書いて大切な人に贈ろうとか、年明けに「どんな一年にしたいか創作4字熟語を書いて」って言われるとか。
 
その時、私は「超ウケる」を「超宇気流」って書いたんです。
 
 

 
 
▼野間
「宇宙にまで笑いがながれていく一年にしたい」って発表したら、みんなが「ウケる!おもろい!」って言ってくれて。
 
七夕の短冊には、願いを過去形で書いてみなさいって言われるんで、「ダイエットに成功しました」っていうと、「いや、ダイエットに成功した後、ハワイに行ってビキニでカクテルで乾杯するっていうくらいイメージしてみて」って言ってくれたり、面白いんですよ。
 
書を書く時って、自分の気持ちと向き合うんですね。
そのプロセスを経て自己表現をしていくので、受け入れられたらすごくうれしい。
 
 

 
▼野間
子どもにも「これしなさい」「あぁしなさい」って言わなくなりましたね。
自分もやりたいことをやってるから、「やりたいことやってみたらいいよ」って言えるようになりました。
 
先生に書道教室を開きたい願望は入会した時から伝えていて、ちょうど先生がアシスタントを募集されていたので迷わず手をあげました!
 
 
 

好きなことが仕事になった


 
Q:「好きなことを仕事」にしてお金を稼ぐって難しいですか?
 
▼野間
個人的な課題としては、今は「準3段」なんですね。
 
協会によって違うんですけど、3段を取れたら、小学生や幼児向けの書道教室を開ける試験の受験資格をもらえるんですね。
 
5段だと師範になれる試験が受けられる受験資格がもらえて、あと、先生から「雅号(がごう)」っていう書道家の名前をいただけるんです。一番下の子どもが今3歳なんですけど、この子が小学校に通う頃にはここまで行きたいと思ってます。
 
今はその道半ばなんですけど、私の中で書道でお金をいただけた大きな経験は、作家・ブロガーで有名なはあちゅうさんのオンラインサロンの「はあちゅうサロン」に入ったとことです。
 
 
 
Q:オンラインサロンの中でもなぜ「はあちゅうサロン」を選んだんですか?
 
▼野間
2018年の4月頃に、近所の幼稚園でNPO団体の方と書道のパフォーマンスとかワークショップをやってたんですけど、道具を買い揃えるのってお金もいるじゃないですか?
 
だから、「ポルカ」っていう友達やネット上の友人から募金というか、支援をしてもらおうと思って、やってみたんですよ。そしたら全く集まらなくて。
 
「ポルカやってる人ってTwitterやってるなぁ」って思って、Twitterを始めていろんな人と交流してたんですけど、その中で、ホリエモンやキングコング西野さんが「オンラインサロンが面白い!」って話題だったんですよ。
 
それで、「はあちゅうサロン」のことも知って、すごい人気で「これは入らないと!」って思って勢いで入ったんです。それまでは、はあちゅうさんのことを知らなかったんですけど(笑)
 
 
でも、入ってから「自分を仕事にする生き方」っていう本を読んで、「若いのにすごいなぁ」って思って。実際に会ったら優しい普通の女の子なのに。
 
 
そこで、扇子に書を書いて、2018年6月の定例会で無料で配ったんですよ。
 
 

 
▼野間
そしたらはあちゅうさんがSNSで取り上げてくれたんですね。それで露出も増えて、みんな欲しいって言ってくれて、1つ500円で買ってもらえたんです。
 
 

 
▼野間
それまでは、「書道って教室を開かないと収入にならない」って思ってたし、「無名な人が作品を売る」っていう発想が全くなかったので、この経験がすごく大きかったんですよ。
 
 

 
▼野間
今、少子化で「教室を開いても生徒が集まらない」っていう人もいるみたいなので、作品で収入を得るというか、「野間志保だから頼みたい」って思ってもらえる自分になることが大事だなって思ってます。
 
 

 
 
 

今後の夢・目標


 
▼野間
ママ友の子どもを対象にした「書道ワークショップ」を不定期でやってみると、集団生活が苦手、学校がしんどい、不登校の子もきてくれていて。
 
書を書いてる時、リラックスしたりノビノビして表情も良いんです。
私も毎日だとシンドイと思うけど、人の子だからゆったり聞けるし。
 
「楽しい」っていう気持ちを持ってもらえてるのがうれしいので、そういう機会を増やしていきたいです。
 
 
 
▼野間
双鳳先生の元で学んで4年が経ち、書道の技術だけでなく人との関わりなども学ばせていただき自信もついてきました。
 
今後、ワークショップや書道パフォーマンスなどの活動や オファーを受けた作品制作もしていきたいです。
 
 

 

 

 

 

 

 

 
▼野間
特にこれから大人になっていく子どもたちに、理屈はよく分からなくても「なんか書道楽しい!」っていう、自己表現をするおもしろさを感じてもらいたいし、そういう体験を積み重ねていってもらえたら嬉しいな。
 

 
 
▼野間
手紙をもらって涙を流すとか、夢が叶うように短冊に願いを書くこととか、「こんな1年になってほしいな」とお正月に書き初めで決意表明をすることとか、実は日常、書に囲まれて過ごしているじゃないですか。
 

 

 
 
 
▼2019年9月30日に開催された、日本初!障害者・介護施設での新しいレクリエーション「パラ★フェス」でもワークショップを開催しました▼

上の動画の5分24秒くらいから登場します。
ライブパフォーマンスの雰囲気もわかるので、ご覧ください。
 
 
 
▼野間
デジタルの時代だからこそ、「書く」というアナログ文化の価値は上がってきていると思ってます。書には人間の心を揺さぶる力があると信じています。
オファーをいただいたら、全力でやります!
 
 

野間志保 プロフィール

20年間勤務した会社を退職した後、時間の余裕が生まれ、自分と向き合う。
「自分が長く続けてこれたのは書道だ」と気づき、書道家を目指して武田双鳳先生の教室に通うようになり、弟子入り。
はあちゅうサロン加入を気に、好きなことを仕事にする一歩を踏み出した。
現在は、書道ワークショップやライブパフォーマンス、作品制作のオファーを受けながら活動中。
 
 

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